特集

軽量化への挑戦

2001年に登場し、凹凸のある独特なフォルムでロングセラーとなった缶チューハイ。
軽量化を目的として開発されたダイヤカット缶には、
「ミウラ折り」というユニークな手法が導入されています。
ここでは、ダイヤカット缶の開発に関わった3名のプロジェクト・メンバーから、
環境負荷低減への当社の取り組みと、ヒット商品に込められた技術へのこだわりを聞きました。

軽量化への挑戦

容器の軽量化を目的としてダイヤカット缶を開発

スチール缶では軽量化をコンセプトとした容器として、側面に複数の凹んだ輪帯を施したビード缶が昔からありました。缶の強度を保ちながら側壁を薄くすることができたのです。当時、これに代わる技術を探していた時、ある研究員が目をつけたのが、航空宇宙工学が専門の三浦先生の論文に書かれていた「ミウラ折り」でした。

「ミウラ折りは、NASAによるロケットや飛行機の強度研究が元になっていて、物の強度が増す折り方のこと。論文を読んだ当社の研究員が、缶に応用できないかと考えたのです。ダイヤ形状の折りをコンピュータでシミュレーションしてみると、確かに缶の強度が上がる。そこで作ったサンプルをダイヤカット缶と名付けました。当時開発されたばかりのスチールのTULCにダイヤカットを施し、完成したのが1995年。当時の既製品に対し28%も軽量化ができました。その後、缶コーヒーとして販売され、一時期ブームとなるほど注目されたのですが、数年で終売となりました」(大塚)
「スチール缶にダイヤカットを施すと軽量化につながります。ならば、アルミ缶で活用してみたら何が起こるかを試してみました。アルミは薄いため内圧が必要。そのため炭酸飲料を充填してみると、容器が膨張して肝心のダイヤカットの模様が消えてしまう。これでは意味がないとなり、アイデアはお蔵入りに。しかしある時、倉庫に仕舞い込んでいたサンプル容器を整理するため、中身を捨てようと缶を開けると、ダイヤカットの模様が戻った。この挙動には関心が高まったものの、その時は提案できる商品が見当たりませんでした」(青柳)

軽量化への挑戦

缶の形状が付加価値となり新商品に採用

再びダイヤカット缶が注目されたのは、2000年のこと。大手飲料メーカーが主催するイベントで新商品としてプレゼンテーションしたところ、担当者から高い評価を得て、ダイヤカット缶の採用が決定しました。

「缶を開けてダイヤカットの模様が現れた時、会場から大きなどよめきが起こったのを覚えています。正式な採用の連絡を受けたのが約1ヶ月後。その後、ビールか発泡酒だろうと思っていた商品が、チューハイと聞かされた時は本当に驚きました。チューハイ事業に初参入で新商品、しかも売上目標もかなり高めに設定されている。そして一番の課題は納期。あまりにも開発期間が短く、戸惑いました」(浦田)
「飲料の中身が変わると、缶の評価をし直さなければなりません。チューハイには風味にさまざまな種類があり、果汁が入る場合には腐食など缶への負荷も大きい。ビールと比べて検証項目が大幅に増えます。デリケートな飲料の缶に加工を施すわけですから、ハードルが上がりました」(大塚)
「お客さまの採用の決め手となったのは、楽しくお酒を飲める容器だということ。缶を開けた時の変化や動きが評価されたのだと思います。ダイヤカット缶の本来の目的は軽量化でしたが、結果的には容器の新たな付加価値につながりました」(青柳)

さまざまな課題を克服して大ヒット商品に

ところが、商品への採用が決定してから発売日直前まで、営業・開発・生産の各担当者、さらにお客さまも巻き込んでの数多くの試練を経験することになりました。

「缶の形状が複雑になったとしても、生産性を落とすわけにはいきません。アルミのダイヤカット缶の製造は初の試みで、加工するための金型形状や生産機の構造など検討を重ねました。通常は試験機を作ってから、実際の容器を製造するための生産機を作るのですが、あまりに納期が短いため同時並行で設計・開発を進めなければなりませんでした。試験機の結果をふまえて生産機の設計に活かすなど、設計担当者は本当に大変だったと思います」(大塚)
「お客さまに対しては、可能な限りギリギリまで納期の調整をお願いしました。社内では、技術陣の窓口である大塚さんとコミュニケーションを密にしながら、お客さまとの妥協点を見出していきました。ダイヤカット缶はお客さまもリスクを承知で採用していただいたので、絶対に成功させたいプロジェクトでした」(浦田)
「途中、冷や汗をかくような出来事が何度もありました。お客さまの方でチューハイのサンプルを充填してみたところ、開缶時にダイヤカットの模様が戻らない。理由を検証して手直しし、今度は実際の生産ラインで充填したところ、今度もダイヤカットが上手く現れない…。金型の手直しをするのですが、出荷日は決まっています。工場の方には24時間体制で協力を仰ぎました。製缶工場は仙台にあり、缶の評価をするのは横浜です。金型のサンプルを持って、新幹線で何度も行き来したことを覚えています。出荷直前にもトラブルに見舞われましたが、お客さまと一緒に問題を究明。その甲斐あって不良品は出なくなりました。飲料を充填する工場の方だけでなく、事務の職員、そして当社の社員を含め総出で検品した時は感無量の気持ち。チームの一体感が生まれた瞬間でした」(大塚)

お客さまとの二人三脚でさらなる技術開発に挑む

2001年夏に販売がスタートした缶チューハイは、1年間の販売目標をたった2ヶ月で達成するという、予想をはるかに超える空前の大ヒット商品となりました。

「飲料メーカーさんとしては、もちろん味には自信があったと思います。美味しいだけでなく、ネーミングもいいし、容器の形状にも個性がある。まさに三拍子揃ったことが、大ヒットにつながったと思います。当初の予定から大幅に生産ラインを増やし、現在では3つの工場で生産できる体制で対応しています」(大塚)
「お客さまには大変喜ばれました。チューハイ事業への初参入にもかかわらず、3年目でトップブランドになっていましたから。これをきっかけに他の製品のお取引も増やしていただけることになりました。このプロジェクトが信頼構築につながったと実感しています」(浦田)

容器の軽量化への取り組みが生み出した新たな付加価値。今後も東洋製罐では、サスティナビリティというテーマで、環境負荷低減へのチャレンジを継続します。

「東洋製罐グループホールディングスの綜合研究所ではシーズとなるベーシックな研究開発を、私たちテクニカル本部では生産に向けた具体的な研究開発を行っています。またTULCにラミネートする樹脂など素材からのアプローチを含め、幅広い観点から軽量化や省資源に向け取り組んでいます。社内で培ってきた技術をもう一度掘り起こし、今回のような新たなコンセプトで提案するという視点は次のイノベーションにも繋がっていきます。」(青柳)
「環境を考える時、サスティナビリティは最大のテーマ。限りある資源をどうやって永続的に活用していくかが、我々のミッションだと考えています。技術革新に終わりはありません。これからも省資源で、しかも付加価値の高い容器を提案してまいります」(大塚)

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